青春18切符
名前は知っていた。どんな仕組みかもだいたい知っていた。
ただ僕とは無縁だと思っていた。
「名古屋、行こうよ。名古屋なら日帰りできるから。」
あの人は言う。
「旅行、遠出ってしたことないでしょ?年末で休みだし。」
そんなことから人生初の青春18切符で、朝6時過ぎ、まだ暗い時間から電車に揺られ揺られて名古屋行って食べて食べて歩いて歩いて喋って喋って買って、久しぶりにとても人間らしいことをした。
朝焼け、1人でカーテンの隙間から見るものとは全く違う。走る車窓から「あさひだ!!」「初日の出じゃないけどね」とか笑い合いながら見る朝焼けは最高のものだった。
人生初のひつまぶし。
「騙されたと思って食べてみてほしい」
あの人は言う。
信じられない待ち人数に驚愕したけど、ひつまぶし食べてもっと驚愕した。
「鰻ってこんな美味しいんだ」
久しぶりに食欲が湧いて綺麗に完食。
ポケセン行ってほしいものを探す、あーだこーだ言いながら栄の街を歩く。
「ずっといっしょにいられますように。」
そう、ほんとはそう思ってる。
思わず縁結びのお守りを買ってしまった。もう何個目なんだろ。
ほんとは離れたくない。隣に居るとどんなに落ち着くか。楽しいか。生きててよかったなぁと思えるか。
晩ごはんは名古屋コーチン鍋とかきしめんとかとか。たらふく食べた。食べることが楽しいなんて何時ぶりだろう。久しぶりにお酒も飲んだ。
念願のかえるまんじゅうも買ってもらえてご満悦。
名古屋城は諸事情により次回リベンジ。閉まってるものはしょうがない。
ピカピカソーダ売り切れ。今度は絶対飲むぞい。
これでまたいっしょに名古屋に行く理由ができた。そう、こっそり心の中で思っていた。
「手羽先も味噌カツも、まだまだ食べてないものあるよ?見てないものもあるし」
「それに、今回行って帰ってこれたでしょ?まあちゃんだってできるんだよ。」
「また行こうね」
思わず泣いてしまったけど、涙は隠した。
今になって号泣してるけど。
なんていいやつなんだ。なんでそんな自然に僕に優しいんだ。僕はその優しさを少しでも恩返しできてるんだろうか。お荷物になってないんだろうか。急に不安になった。
ごめんよ。でもこれからもまだしばらくいっしょに居たい。居させてください。できればずっと居させてください。
よろしくお願いします。